1. 故・三浦春馬の言葉を紹介『自分たちの役目は想像力を届けること』
2021年8月6日(金)『映画 太陽の子』の公開初日舞台挨拶が『TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7』(東京・六本木)にて行われ、柳楽優弥、有村架純、黒崎博監督が登壇。故・三浦春馬との撮影時の思い出や本作に込めた思いを語りました。
柳楽「2年前に撮影を終え、いよいよ皆様にお届けできて嬉しい」
太平洋戦争末期に存在した『F研究』と呼ばれる“日本の原爆研究”を背景に、時代に翻弄されながら全力で駆け抜けた若者たちの等身大の姿を描いた本作。
『青天を衝け』など多くの話題作を手がける名手・黒崎博が監督・脚本を務め、柳楽優弥、有村架純、三浦春馬がメインとなる3人の若者を演じました。
広島の原爆投下から丸76年となるこの日。本作の主人公で原爆研究という極秘任務に情熱を燃やす科学者の兄・石村修を演じた柳楽優弥は「2年前に撮影を終え、いよいよ皆様にお届けできて嬉しいです」と感謝を述べ、黒崎監督は「胸がいっぱいです。こうして大きなスクリーンで見て頂けて、キャストの皆とここに立つことができて光栄です」と思いを明かしました。
有村「春馬さんは全て調合し良い空気が作れる役者さん」
本作で、戦時下でも未来を見据えて生きる女性・世津を演じた有村。紫色のドレスで登壇した有村は柳楽・三浦の2人について「柳楽さんは周りを巻き込む力が強い方で、いるだけで周りがどんどん吸い込まれていく。春馬さんはまた違って、色んな空気とか個性とかを全て調合して皆が気持ち良い空気が作れる役者さん」と印象を語りました。
絶妙なキャスティングとふられた黒崎監督は「台詞で演じる以前に、それぞれが持っているものと撮影に向けた準備で、スタート前から大事なセッションが始まっているということを現場で感じ撮影していました」と、幼馴染役3人の絶妙な空気感を明かしました。
美しい海で過ごす日中のシーンについて語る3名
トーク中盤では場面カットを映しながら語るパートに。修が数式を書き進めるシーンについて、柳楽は「当日朝に渡されて。みんなで頑張りながら覚えました。書き慣れた京大生らしさなど、そういうところも教えて頂きました」と当時を振り返る。
3人が京丹後の美しい海で過ごすシーンについて有村は「出番を待つ場所のすぐ上にすごく大きな蜂の巣があって(すぐ上を指さし)『蜂の巣があります』って話したら、現場のスタッフさんが本当に頑張って取ってくださって。みんな救われました」とエピソードを披露し、柳楽も「砂浜から(蜂が)バンバン出てきてた」と当時を振り返る。
そして有村は「あのシーンは京都ロケのまだ最初の方で、3人の幼馴染の空気感が出る重要なシーン。でも、既に空気感が出来ていて、アドリブもあったり、印象に残っています」と明かした。
弟・裕之(三浦)を母・フミ(田中)が見送る重要なシーン
(場面写真)
戦地に戻る演じる弟・裕之(三浦)を母・フミ(田中裕子)が見送るシーンについて有村は「私も日頃から台詞のない部分を大事にしているんですけど、改めて言葉で表現できない思いっていうのがあるんだなと改めて確信し、自分自身も言葉以外の思いをもっと表現していきたいと。勉強させて頂きました」と振り返る。
柳楽も「裕子さんも勿論なんですけど、やっぱり春馬くんの雰囲気も素晴らしいなと見ていました」と懐かしそうに振り返った。
最後の挨拶で黒崎は「正直に申しますと『足りないんじゃないか、春馬くんが何でここにいないんだろう』と思います。とても難しいですが、今日は伝えたいです。スクリーンの中に一緒に走り切った春馬君がいます。キャストみんなで言いたかったのは、どんな難しい状況でも最後は生きて、生きて、生き抜くことしかないということ。バカみたいにストレートなメッセージが少しでも皆さんに届くと、こんなに嬉しいことはないです」と観客に向けて力強くメッセージを送り、大きな拍手を浴びた。
有村は「本当に沢山の伝えたいメッセージがあって、若者たちが懸命に生き抜いていく青春のお話です。今は先行きが不透明ですが、春馬さんもよく仰っていた『自分たちの仕事・役目は想像力を届けることだ』ということを、改めて自分も皆さんと一緒に考えていけたらと思います」と、三浦の言葉を紹介した。
最後に主演の柳楽が「今日の広島の式典(のスピーチ)で小学生の方が『別れるというのは出会えなくなるではなく、忘れられる』ということを仰っていて。人に対しても、歴史に対しても、忘れていくことが一番怖いなと僕も感じました。映画を通して、皆さんに伝えていくことが第一歩だと思いました。」と本作に込めた思いを語り、舞台挨拶は終了しました。
『映画 太陽の子』は全国公開中です。
©2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ
(取材・文・撮影/落合 宏樹)